11.21.16:48
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09.14.21:23
衛星紀行
お久しぶりです!
企画提出文でございます。竜巻空気を書かせていただきました!
「よっこいしょ」
おっさん臭い台詞を吐き(掛け声はいかにも人間らしい言葉だと思う)シャッターを上に押し上げる。傍らのロボットが人間で言う瞳の部分を大きく見開いた。手動に驚いたというところだろう。所々説明していっても問題はないが、如何せん、雰囲気がない。
「さて、と」
暗い部屋に電気をつけ(もちろんこちらも手動)一つだけある椅子に座る。先ほど傍らにいたロボットも部屋に入ってくる。
ボタンを一つ押せば、狭い部屋の壁いっぱいに写し出される個々のビジョン。一定時間で消えては、他の地域を映し出す。
「どうですか?」
「地球上の天候を随時更新、しかもかなり短時間に…」
「これで天気を見るんですよ。台風などが発生すればすぐ分かるようになってます。」
本当は敵。でも、彼は他の奴等と違う気がしていた。そんなもの違うはずないのに。もしかしたら自分が敵として生きていたことが影響しているのかも、と思うが、やっぱり、彼以外は大嫌いだ。
だから、自分の仕事の拠点であるこの塔に招いた。
油断しすぎかもしれない。わざと寂れた、今にも壊れそうな塔の中には、ライト博士や気象に関してのスペシャリストが粋を集めて生み出した最先端の技術がある。そして、自分だけの場所。
「今日は世界的に見ても天気は穏便です。」
「本当だな。」
そういって人間らしく目を細めた彼ーDWN.010、エアーマンは敵らしくないカメラアイで次々に写し出されるヴィジョンを見つめる。
その目が余りにも綺麗だから、優しいから。色々と勘違いしてしまいそうだ。
「まだ、記憶残ってますか?」
覚えるなんて概念はない。メモリーカードが自分の記憶を司っている。だから、エアーマンの記憶ももしかしたら消去されているかもしれない。
「何をだ。」
「確か、ここで俺たち出会ったんですよ。」
映像をアップすれば、よく気流により天気の荒れやすい地区がいっぱいに写し出される。
「あのときは攻撃してすみません。」
「いや、こっちも悪かった。」
苦笑いで誤魔化す。
「そういえば、あそこは。」
次にアップされた映像にエアーマンが反応する。
「復興早いですよ。」
DRNでもDWNでもないロボットが破壊した町。復興は早い段階で行われている。
「良かった。」
悪役らしくない言葉に、鋼鉄でできた冷たい心がおかしくなる。
次々と写し出される映像を、お互い思い出したかのごとく言葉を交わす。
「世界は広い。」
「ですね。」
「…よければ、これから、このヴィジョンに映る場所全てに思い出を作りませんか。…一緒に。」
精一杯だった。
少しの思い出でよかったのに。
この無数に映る世界の映像で、数分という短時間でも二人だけの思い出がほしいと願ってしまう。
ロボットに神などという概念はないというのに。
「…見ているだけでも旅行しているようだな。」
「うあっ、あ、そうですね。」
「でも見るだけでは勿体無いな。…また今度、見に行ければいいな。」
「はい、行きましょう、いつか!」
衛星旅行
衛星だけじゃ足りない、すべて
自分たちのカメラアイで記憶していたい、ずっと。
二人の想い出
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紀行…旅日記
ということでそれっぽい雰囲気が出ていればいいなと思います!
竜巻空気増えろー!という思いをこめて。
沢村様、素敵な企画ありがとうございます!
2011/1/18 改行変更。
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